村上春樹の作品ということで素晴らしいぜ、やっふーっ! と世間は持ち上げ、ラノベの批判でまず最初に使われる長いタイトルの文句を一切いわれなかった小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。読んでみました。今回はその感想になります。小説であろうが、ゲームだろうが、DVDだろうが、アイドルの握手券であろうが、深夜に並んで買って感極まる姿はどれも同じなのにどうして世間の扱いや見方が変わってくるのでしょうね。まぁ、私がいってもなんにもならないですが。

 思っていた以上にネタバレがあったので後半へ続く。








 さて。この作品の内容を紹介すると、

主人公多崎つくるは大学時代、仲の良かった高校の時の仲間に理由もわからずハブられてしまいます。そこで死ぬことに取り憑かれたものの、どうにか折り合いをつけ社会に出て早三十後半。ふとしたきっかけで彼女にそのことを話すと彼女は「その理由を知るべきだ」とつくるに進言します。つくるは彼女の後押しもありハブられた理由を探しにいきます。仲間の今は? 当時何があったのか? つくるがハブられた理由は? 作るの過去と仲間たちの今を巡る年が始まります。

と、こんな感じでしょうか。

 最初の2ページちょっとは、おっ、と思いました。私も似たように死に取り憑かれたことのある(今でもそうかもしれませんが)ので心情がよくわかったのです。しかし、まぁ、読み進めていくと、仲間にハブられて死のう、などというものでおいおいと心のなかで思ってし今いました。ハブられてることなんて日常的に行われていた私にとってはその程度としかいいようがなかったからです。ひょろいなぁ、などと思ってましたが、実はそんなことは些細な問題でした。

 この小説でどうにも納得いかないのは主人公の彼女です。例えば主人公の高校時代を聞いた後、

「(前略)その仲良し五人組のグループはどうなったのかしら?(p20)」

と、その後の話を聞きながら、大学時代にハブられたことをいってしまい戸惑っている主人公に対して、

誰かにその話しをしちゃうことが必要だったからじゃないかしら。自分で思っている以上に(p40)」

と、いいます。いや、どう考えてもお前が聴きだしたんだろう? 自分で地雷を踏むように仕掛けておいて、あなたのココロの問題よってどういうことだよ。占い師にでもなったつもりかよ。その後、強烈にハブられた理由を知ることを熱心に進め、その仲間が今どこで何をやっているかまで突き止めてしまいます。お前なんだよ。何が目的だよ。挙句の果てに海外航空チケットや現地の案内人まで教える始末。どう考えてもお前がラスボスだろ。そうとしか考えられないだろう。

 実は二股していた彼女ですが、終盤、主人公は彼女へ熱心に気持ちを伝えます。しかし、彼女はのらりくらりしたまま。そして回答を得る前日でこの話は終わります。おい、お前なんだよ。主人公は体の良いペットちゃんだったのかよ。色々路頭に迷っている可哀想な男を私が助けてあげてる私ってなんて素敵なのかしら! って自己陶酔するために主人公を扱ってきたのかよ。実は登場人物で亡くなっているものが一人いるのですが、実は彼女が殺したんじゃね? なんか知ってそうな雰囲気だったし。などとも考えてしまいます。

 話が出てきたので話題を変えます。少し出たように、主人公を含め5人の仲間のうち、一人、何者かに殺されてしまいます。そしてその人物は主人公がハブられたきっかけにもなっているのですが、ハブられた理由は分かったとしても、その人物がなぜ殺されたのか、誰に殺されたのまではわからないままです。そしてこのような消化不良である出来事がいくつかある内容になっています。フラグも建てっぱなしで回収しないのがわんさかあります。読み終えても気になって仕方ありません。回収しろよ、本当。

 そして物語全体の雰囲気が現代というより明らかに90年代です。設定はどうやら今のようなので、だから、どうも内容がチグハグしてしまい浮世離れな感じがします。これはある意味作者がこのバブル世代で止まっているのではないのか、などと勘ぐってしまいますが、こんなことを書くとこの本と1Q84しか読んでないお前が村上春樹を語るな、と怒られると思うのでこの辺にしておきます。

 ただ、作者のいいたいことはよくわかる内容です。帰るべき場所がそれぞれにはあって、ない人もいずれ見つけていかないと駄目になっていく。そこはきっと心の拠り所になっているのでしょう。ただ、それをするのに彼女が強引に進めるのは納得いかないし、それに頼りっきりの主人公も主人公です。まぁ、この後、彼女が主人公ではなくもう一人の男を選んだとするのなら間違いなくバッドエンドですよねー。
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